進化し続けるサカナクションの現在 最新アルバム「アダプト」全曲解説とともに探る

進化し続けるサカナクションの現在
最新アルバム「アダプト」
全曲解説とともに探る

サカナクションが2021年秋より「アダプト」「アプライ」と名付けられた2作のコンセプトアルバムを含む新プロジェクトを展開している。

第1章となる「アダプト」は、2021年11月に行われたオンラインライブ、12月から2022年1月にかけて開催された全国アリーナツアーの流れを汲む内容。コロナ禍によって激変した現実に“アダプト”(適応)し、新たなエンタテインメントを体現するアルバムとなっている。この記事では常にアップデートし続けるサカナクションの“今”が刻まれた本作を詳細に紹介したい。

文 / 森朋之

ギターロック、フォーク、エレクトロ、アンビエント、ダブなどを自由に行き来する音楽性、身体的な表現と最新鋭のテクノロジーを駆使したライブパフォーマンス、そして、繊細な叙情性を感じさせながら、移り行く社会へ鋭くメッセージを突き刺す歌詞。サカナクションは2005年の活動開始以来、変化と進化を続け、多様にして多彩な音楽を提示してきた。その根底にあるのは、マイノリティとマジョリティをつなぐという意思だ。
2020年に始まったコロナ禍の中でもその姿勢は変わらず、刻々と変わっていく状況を見つめ、この時代に在るべき音楽を追求してきた。その最初の成果とも言えるのが、コンセプトアルバム第1弾「アダプト」。日本的フォークロアとグローバルポップが混ざり合う、2022年のサカナクションが堪能できる1作だ。

1. 塔

深い海の底、または鬱蒼とした森の奥を想起させる、深遠にして繊細なシンセサウンドを描き出すオープニングSE。“塔”というモチーフは、アルバムに先立って行われたオンラインライブ、アリーナツアーのシンボルとなった“アダプトタワー”(4階建てビル相当のステージセット)とつながっている。楽曲の後半ではピアノ、ギターの繊細なフレーズが鳴り、本作全体を包み込む世界へと誘われる。1つひとつの音の造詣と重ね方、細かい粒子のようなノイズの入れ方、全体的な音の位相など、サウンドデザインも美しい。

2. キャラバン

洗練されたギターカッティング、しなやかなファンクネスをたたえたリズム、シンセによるホーンの音が絡み合い、奥深く、心地よいグルーヴを生み出すミディアムチューン。中盤ではダブのアプローチが挿入され、後半ではミニマルミュージック的な表現が取り入れられるなど、このバンドらしいハイブリッド感もたっぷりと施されている。歌詞にある“砂漠”はおそらく、コロナ禍における街の風景の暗喩。サウダージ感が漂うメロディとともに紡ぎ出される「行こう 砂の街 前人未到の夢の里」というフレーズからは、先が見えなくても、進むことをあきらめない決意が伝わってくる。

3. 月の椀

現代的なポップネスと叙情的な歌。サカナクション本来のスタイルをさらに前進させた楽曲だ。80’sシンセポップと2010年代以降のネオソウル、ファンクリバイバルを結び付けたアレンジは、まさに現在の潮流。その中でノスタルジックなメロディを奏でることで、J-POPとグローバルポップをナチュラルに結合させることに成功している。「月に話しかけてた 君の横顔は まるで夜の花」から始まる、日本語の美しさを滲ませた歌詞も秀逸。言葉の響きを生かし、リスナーの頭の中で映像を想起させるフレーズを連ねる山口一郎の作詞のセンスは、ここにきてさらに深みを増している。

4. プラトー

2021年12月に配信リリースされ、本作「アダプト」の起点になった楽曲。ノイジーなギターフレーズ、トライバルなリズムを刻むドラムで幕を開け、「この夜は 間を閉じて見た幻」というサビで最初のピークに。ジャズ的な匂いが感じられるピアノなどを加えながら徐々に高揚感を増し、最後のサビで圧倒的なカタルシスが生み出される。メンバー5人の音、そして、言葉とメロディというのも根源的な要素を奔放なアイデアで組み替えることで強烈な興奮を呼び起こす、サカナクションの新たな可能性を実感できるナンバーだ。

5. ショック!

嶋田久作、古舘佑太郎らが出演する架空の情報番組「Shock!」から派遣された女性レポーターがメンバーにインタビューを試みるも、なぜかボーカルの山口一郎がスタジオに乱入する……という映像も話題を集めた配信シングル。アフロビートを色濃く反映したダンサブルなサウンド、昭和歌謡のテイストを感じさせる素朴なメロディ、「ショック!ショック!ショック!」とリフレインする歌詞が共鳴するこの曲は、アリーナツアーで披露され、観客も“ショックダンス”で盛り上がるなど強烈なインパクトを残した。サカナクションのエンタメ性が際立つ楽曲と言えるだろう。

6. エウリュノメー

冒頭はドラムのハイハットの刻みを皮切りに、さらにさまざまな打楽器、打ち込みのビート、スクラッチ音、低音を強調したシンセベース、サイケデリックな雰囲気の効果音などが混ざり合う、トライバルテクノの進化系と呼ぶべきインストナンバー。オーガニックな手触りを持つ音像と、最新鋭のエレクトロミュージックがせめぎ合うような構造は、エキゾチックかつ未来的だ。共同アレンジャーには山口一郎が主宰するプロジェクト・NFにも参加しているクリエイターShotaro Aoyamaも共同アレンジャーとして名を連ねている。

7. シャンディガフ

最初に聴こえてくるのは、咳払い。その直後に不思議な揺らぎを持つピアノサウンドが響き、「ビールを飲んでみようかな」というラインが続く。音数を抑えた有機的なアンサンブル、たゆたうような歌を軸にしたこの曲は、まるで目の前でメンバーが演奏しているような臨場感をたたえたミディアムチューン。どこかリラックスした音響の中で山口は、泡のように消えてしまった日々を思い出し、ちょっとした侘しさや孤独を感じながら、「最後に僕が信じたのは 少しの愛と 少しのだらしなさかな」と呟くように歌う。決して派手さはないが、聴き終わったときに言葉にできない感情が宿る、儚くて愛おしい楽曲だ。

8. フレンドリー

「正しい 正しくないと 決めたくないな」という歌い出しでフッと体の力が抜け、少しだけ気持ちがラクになる。コロナ禍以降、それぞれの価値観の違いによる分断、理解し合えない状況があらわになった社会において、この冒頭のフレーズには、物事をいい方向に導くためのヒントが潜んでいると思う。ゆったりとした浮遊感とともにグルーヴするサウンド、感情の揺れと重なるようなメロディ、そして独り言のようにも、そばにいる人に話しかけているようにも聞こえるボーカルも印象的。シリアスなテーマを心地よいポップチューンとして表現し、幅広いリスナーに届けようとする姿勢に心を打たれる。

9. DocumentaRy of ADAPT
(CD限定ボーナストラック)

サカナクションのライブの定番となっているDJスタイル(全員が横並びに立ち、ラップトップを操作しながらリアルタイムでダンスミュージックを作り出す)を想起させる、8分超えのインストナンバー。快楽的なグルーヴをたたえたビート、強烈なファンク感を放つベース、さらにシンフォニックなシンセの音色、鋭利なギターフレーズが生々しく絡み合うこの曲は、デジタルと生音を絶妙なバランスで融合させてきた5人の最新モードに直結している。“この曲を爆音で浴びたい”という欲望が湧き起こる、極めて刺激的なトラックだ。

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