年末年始は笑って過ごそう！
自宅で観られる三谷幸喜の映画たち

三谷幸喜の映画監督デビュー作にして、その後の方向性を決定づけた唐沢寿明主演の群像コメディです。主婦・みやこ（鈴木京香）が応募したシナリオが、ラジオドラマ化されることに。大喜びも束の間、色んな人が口出しし、生放送なのに途中で何度も書き直しさせられ、どんどん辻褄が合わなくなっていくのですが……。色んな人がクルクル入れ代わり立ち代わり、現場と裏方双方で混乱と騒動が勃発します。その、あれよあれよと転がっていく展開に抱腹絶倒です。

監督第２作は三谷自身の体験をベースに、夫婦のマイホーム建築にまつわる騒動と顛末が軽妙に描き出されます。大工の棟梁である妻の父親（田中邦衛）が施工を、友人の建築デザイナー（唐沢寿明）が設計を担当しますが、性格も考え方も真逆の２人は、プライドを懸けて激突してしまい……。三谷作品には珍しい家族もので、人のいい夫婦にココリコの田中直樹と八木亜希子という、異色の配役も新鮮。もちろん豪華俳優陣が脇を固めています。

監督第３作は、“グランドホテル形式”に則った、オールスターキャストによる群像コメディです。老舗の高級ホテルを舞台に、大みそかの夜22時から新年を迎えるまで、従業員から客人に至る多勢の人生の悲喜こもごもが活写されます。この夜を無事に乗り切りたい副支配人に役所広司、夢をあきらめ田舎に帰ろうとするベルボーイに香取慎吾など、三谷組を新たに担う役者陣も続々映画に参戦。2006年邦画第３位の興収を記録する大ヒット作です。

監督第４作は、すでに十八番の豪華キャストによる群像劇に、裏社会のノアール風味をまぶしたクライムコメディ。ボスの愛人に手を出した手下（妻夫木聡）が、自分の命を担保に、ボスが探していた“伝説の殺し屋・デラ富樫”を連れてくると大ボラを吹いたものの探し出せず、売れない三流役者（佐藤浩市）を殺し屋に仕立てます。そこから予想外の展開へ転がっていきます。佐藤のコッテコテ演技＆おバカぶり、その妙演に吹き出すノンストップドタバタコメディ。

監督第5作は、法廷コメディです。崖っぷち弁護士（深津絵里）が、殺人罪で起訴された男を弁護することになります。そこで、旅館で金縛りにあって動けなかったというアリバイを証明するため、被告人の上に一晩中乗っていた落ち武者の幽霊（西田敏行）に証言させようと奔走しますが……。落ち武者ゆえボロボロな形相で奔放な言動を繰り出す幽霊、振り回される弁護士に爆笑必至です。それを見えていない設定で演じる周囲の役者らの、笑いをこらえる苦労が忍ばれ余計におかしいのです。

第６作では三谷自身による同名小説を原作に、時代劇に挑戦、新たな風を吹かせました。モチーフは信長亡きあと、謀反人・光秀をいち早く討った秀吉を牽制しようと、筆頭家老の柴田勝家が尾張の清洲城に織田家重臣を集め、正統な後継者を決めようと開いた清州会議（1582年）。勝家（役所広司）VS秀吉（大泉洋）が、しっかり者の織田家三男・信孝(坂東巳之助）、次男殿でおおうつけ者と噂される信雄（妻夫木聡）を担ぎ出し、駆け引きを繰り広げる、その腹の探り合いが見ものです。

傲慢で嫌われ者の総理大臣（中井貴一）が、演説中の投石により記憶喪失になったことで巻き起こるコメディ。周囲に促され記憶喪失のまま公務に復帰という、その珍騒動の行方がディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄らオールスターキャストで多角的に描き出されます。暴言を吐きまくる中井もさることながら、フリーライター（佐藤浩市）のトンデもない変装姿は爆笑ものです。ラスト、ダメ総理が記憶喪失を経たあとに訪れる騒動の顛末は……胸アツな展開に！